FoLoLab vol.6
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大阪にあるフレンチレストラン4店舗の総料理長をしながら、公邸料理人として得たことをお店のメニューにも活かそうと、当時、大阪駅の中で女性が気軽に飲めるお店がなかったので、一般大衆が食べるようなお料理をワインに合うようにしたらどうだろうかと、おでんをフレンチ仕様にアレンジした「フレンチおでん」や「フレンチお好み焼き」などを開発しました。瞬く間に人気メニューとなり、常に行列ができて数多くのテレビ番組で紹介していただきました。当時そのお店は43席の店内に1店舗1日で300人以上入るという状況でした。そうなると朝からずっと並んでいる状態で、厨房から出る暇もありません。太陽を見ることもなく、帰るときは真っ暗。常にパワーを奪われている感じがしていました。いつしか、自然の中で暮らしたいと考えるようになりました。小林市は私の母の故郷で、叔父や叔母が今も暮らしている場所なので、自分も馴染みがあったという理由からでした。休みが取れたら頻繁に小林市を訪れていたのですが、農作物も畜産物も、大阪で食べていた素材の味より、鮮度も含めてクオリティーがはるかに高いというのは、来るたびにずっと感じていました。そこで、今まで都会で多忙な日々を過ごしてきて、母とゆっくり過ごす時間を取りたかったので移住を検討するようになりました。そんなとき、偶然にも調理師学校の先輩から舞い込んできた話が、「シェフ・パトロナージュプログラム」。これは、小林市の強みである豊かな食材を生かしきれていないという課題解決の一環として、料理人を募集して、ここに起点となるレストランをオープンし、地元食材を活用した料理の提供と対外プロモーションを行うというもの。応募させてもらったところ、トントン拍子に決まっていき、小林市の開業支援のもとお店をオープンすることになりました。当時の町長は私の経歴を見て「奇跡が起きた」と言ってくれましたが、私の方こそ願ったり叶ったりでした。まずは新鮮さですね。都心とは圧倒的に鮮度が違います。小林市の畑に広がるのは、黒ボク土と呼ばれる火山灰に由来する土で、長年の工夫を経て畑作に適した土へと生まれ変わり様々な野菜を育んでいるので、濃厚で力強い食材が豊富なのです。あとは何と言っても、鯉。美しい湧水に磨かれた小林の鯉は魚臭さがなく、変な脂分もない。さらに、フルーツも豊富で、マンゴー、ぶどう、梨、林檎、金柑など年間の四季を通じて何らかのフルーツがあります。お肉は言うまでもなく日本一に輝いた宮崎牛をはじめ、鶏や豚などすべて揃っています。しかもそれらが運搬などのタイムラグがなく、すぐに手に入れられるのです。時間があれば畑に足を運ぶようにしているのですが、「シェフ、これ使います?」と食材を持ってきてくださる方もいますし、そうやって生産者の方々との輪が広がっていくのも、ここだからこその魅力だと思います。大阪で総料理長をしていたときは、毎晩FAXで次の日の食材を注文し、全国の産地から調達していましたが、ここへ来てからは、直売所に毎日行って、並んでいるものを見ると置かれているものが日々変わっていることに気づく。季節によってないものもありますが、それもまた旬を感じられ、メニューを作る際のおもしろみにもつながっています。帰国後は何をされていたのですか?なぜ小林市に移住し、お店をオープンすることに?小林の食材の魅力とは?5公邸料理人時代の地井シェフ。そこに旅してまで行く。そんな価値のあるレストランをつくりたい。
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