FoLoLab Vol.9
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    一方で、消費者の「価値あるものには投資する」、この考え方はアメリカも日本も相違ないと感じた。「朝食メニューのみで勝負する」「どこにも負けないチキンを提供する」といったブレない方針が店舗の差別化に繋がっている。そのような絶対に譲れない幹となるアイデンティティーを元に、店舗のある地域性やマーケットに応じた商品を提供することが繁盛店の条件の1つとなっているのだろう。00店舗近くを展開するファミリーダイニング「FirstWatch」で朝食を取った際5人で80ドル、一人当たり16ドル支払った。1700円の朝食、日本ではちょっと高めのシティーホテルの朝食レベルの金額である。そんな店舗がショッピングモールではなくロードサイド中心という立地で1店舗平均、年間1億5千万円超を売り上げ、同時に高い顧客満足度を得ているという事実こそ、飲食業界の生き残る1つの術なのではないだろうか。たとえ値段が高くても、それに見合ったQSCが提供されるのであればお店は繁盛する。コストパフォーマンスを重視するアメリカらしいといえばそれまでかもしれないが、日本の外食産業にもきっと同じことが言えのではないだろか。トレンドは変わっていく。その変化するスピードは年々加速している。そのような状況の中で、自社の強みと個性を見失わず、なおかつ時代の変化に臨機応変に対応していくことが今の企業には必要であり、これは外食産業にこそ当てはまるのだと思う。以前、このフォロラボでも取材した、静岡でおかし製造販売業を営む株式会社たこ満の平松季哲社長。稲盛和夫氏の経営哲学に影響を受け、自社でもアメーバ経営に取り組んでいるその平松社長が「経営者の仕事は社員一人ひとりの幸せを作ってあげること」と言われていた。今回アメリカでインタビューした全米外食チェーンで3位の売上(1位はマクドナルド、2位はスターバックス)を誇るファーストフード「チックフィルエー」CEOダン氏の「私はChiefEncouragementOfficer(CEO)だ」(最高奨励責任者)との話とリンクした。平松氏は従業員380人全員と1対1で対話することが自身の最も大切な仕事だと語っていた。今日の日本企業の重要課題であり、多くの飲食店経営者の頭を悩ませている「働き方改革」と「時代に合った仕組み作り」。アメリカの外食産業においては、この課題はクリアされていた、というよりクリア出来た店舗だけが、生き残っているという方が正しいのかもしれない。日本の飲食店経営者が今後この問題にどう向き合い、取り組んでいくのか。そのヒントが今回のアメリカ視察に隠されていたように思われた。コストパフォーマンスの重要性変わらぬ信念と、求められる変化11朝食メニューのみで展開する「ファーストウォッチ」。営業時間も7:00〜14:30の7.5時間と短いにも関わらず年商は約1億5千万円。チキン専門店「チックフィルエー」の本社を見学。CEOダン氏も出迎えてくれた。アメリカ中心に2,300店舗以上を展開する「チックフィルエー」。その1号店となる本店を訪問。ファーストウォッチの朝食メニュー。オムレツにトースト、サラダ付き。REPORT〜アメリカ外食産業のいま〜7.5時間営業で、朝食メニュー一本、3

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