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【福岡】【三菱地所アルティアム】アーティストと作品に出会える憩いのギャラリー、最後の展覧会!

福岡のまち

幅広い年代に愛される都会のアート発信スポット

 

とても楽しみで、でも、やっぱりちょっとさみしくて切ない。

福岡市・天神地区の商業施設「インターメディアステーション」こと『イムズ』が約32年の歴史に幕を閉じます。その8Fに、ギャラリーがあることをみなさん知っていますか?

『三菱地所アルティアム(以下、アルティアム)』、三菱地所の文化支援事業の一環として、1989年4月12日に開館し、以来新しい表現を紹介する場所として、のべ140万人以上の方が来場しました。毎年約10本の展覧会を開催し、今回の展が333本目だそうです! 地元の作家や福岡の立地条件からアジアの作家の作品を紹介し、そして、独自の表現、思想を確立しつつも、一方新たな展開が見込める中堅作家の活動を積極的に紹介してきました。国内外のアーティストの手による、デザイン、建築、文学、映画、演劇、ファッション、食など幅広いジャンルの表現を紹介してきました。

昆虫や鉱物などの展示の際は博物館に、絵本作家さんの作品展示の際は遊園地のように、写真やアートの作品展示の際は作品のメッセージにハッとして自分と向き合うこともあり、さまざまな顔を見せてくれて、感動を与えてくれました。来場のお客さんも、ベビーカーに乗った赤ちゃんとお母さん、学生さん、ご年配の方まで幅広く、みなさん思い思いに『アルティアム』での時間を楽しんでいらっしゃいました。

そんな、私たちの憩いの場所が最後の展示を迎えます。個人的にも、思い出が詰まりすぎて、泣きそうです、ほんとうに。でも、だからこそ、最後の舞台をみなさんと見届けたい! そんな思いを込めて、ご紹介します。

 

『絶望を覆すことができない恋を正義とせよ、きみが、死んでも残る花。』

 

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『アルティアム』としての最後の展覧会。過去にアルティアムで作品を展示し、さらなる活躍を続ける作家7名によるグループ展として開催しています。

閉館後も、みなさんが『アルティアム』のことを思い出していただけるよう特別なものにしたい。展示する内容を説明するようなタイトルではなく、そのタイトルを読んだ方、見た方、個々人が意味を見出すようなタイトルにすることで、みなさんの心に残していただきたい、というメッセージを込め、詩人の最果タヒさんにオファーをし、展覧会に向けて書き下ろした詩の一文をタイトルにしています。出口付近に詩の全文を展示しています。壁面に踊る詩は、儚さと力強さを感じさせてくださり、見入ってしまいました。

アーティストの方々の思い

今回、内覧会に3名のアーティストが来場。『アルティアム』と作品に込めた思いをお聞きしました。

◆淺井 裕介さん

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今回の僕の展示されている作品は、実際に会場に来て、ドローイングも含めて、約10日間、作品を制作しました。最果タヒさんの展覧会タイトルのエピソードを聞いて、「あぁ、これが最後なんだな」と急にどわっと実感が沸いてきました。最後だからこそできる展示を作りたいとアルティアムさんにご依頼しました。はじめは、イムズの外壁がやはり特徴的なので、「あそこにぶら下がりながら、描きます」なんて提案させていただいたりもしました。代わりに、特別に、アルティアムの床を削らせていただいたり、イムズの外壁のスペアの上と壁に絵を描きました。アルティアムの32年間という時間を感じられるよう、思いを込めて作っています。

展示作品は、壁に直接、金色の花などを描いています。展覧会をすると壁にビス穴を空けるのですが、そのビス穴を埋めた跡を丁寧に手と目で探り出して、その上にお花を描いていくのをメインにしています。今まで展示してきた、色んな作家さん、今回参加された作家さんが空けた穴もあるかもしれませんし、もちろん僕が空けた穴もあるかもしれません。作家のみなさんとコラボレーションするような思いです。どうしてそんな所に穴を空けたのだろうと思う箇所もあったりして、感慨深く思いながら、作品を作れてよかったなと思います。細部に渡って作っていますので、ゆっくり見てもらえたらいいなと思います。

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金色のお花を注意深く観察すると、ビス穴発見! 床に描かれた線は『アルティアム』の軌跡を表現されたのだそう。「イムズ」の外壁をこんなに近くで見れるなんて貴重です。

 

◆津田 直さん

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僕はアルティアムで2年前、リトアニアにおける鹿の物語を巡る展示を行いました。その時は、既存の壁に作品を掛けるのではなく、独立した壁をランダムにいくつも立てて、森の中をさまよっているような展示空間にしました。アルティアムが32年の幕を閉じようとしていますが、ここで様々な展覧会を通して経験できたこと、ここで生まれたものがたくさんあると思います。最後の展覧会として、もう一度展覧会のオファーをいただいたので、再び足を運んで下さる方々と一つでも多くの出来事や経験を共にしたいと思いました。

今回の展示『やがて、鹿は人となる/やがて、人は鹿となる』では、「あなたのすきとほつた ほんたうのいのちと はなしがしたいのです」という一文をはじめに書きました。そのテーマの背景にあるのが、東日本大震災で多くの命が失われていったこと。2019年に宮城県石巻市で開催された『Reborn-Art Festival 2019(リボーンアート・フェスティバル)』に参加しました。様々なアーティストが集い、「いのちのてざわり」という芸術祭の主題の元に制作に挑みました。その際に、作り始めたシリーズが今回の作品です。それから2年経ちましたが制作を継続し、今回のアルティアムの展示で作品をまとめました。僕はこれまでに写真と言葉を合わせた作品を多く発表してきたのですが、今回は一冊の本にまとめようと思い、展示ケースの中にできあがったばかりの冊子も展示しました。またそのプロセスも同時に展示しています。写真や言葉を辿りながら、それぞれが小さな単位で命と向き合っていければ、という想いを込めました。

 

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本作は、一行の詩を書くことに始まり、イメージが膨らんでゆき、作品の構想が生まれていったそうです。一枚一枚の写真を通じて、私たちは森の中を歩むように、様々な命と出会ってゆくような展示となっています。

 

◆鹿児島 睦さん

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私は、イムズがオープンした時のこともありありと覚えている世代です。個人的にもとても感慨深くて、色んな思い出がこの場所にもあります。今、世界中が混乱し、特に日本は日増しに貧しく、社会的に厳しくなっていく状況に立たされています。若いアーティスト、芸術家の方たちが、発表の場所を奪われ、あるいは活動が制限されている現状です。本当の制作・創作活動ができないまま益々苦しい状況におかれています。美術家や博物館も厳しい運営状況に立たされています。その中でイムズ、アルティアムさんは、そういった若い方たちをたくさんバックアップしてくださった場所だと思います。常に新しいこと、もの、人を、我々に新しい世界を与えてくれました。そんな場所がもうなくなってしまうのだなと思うと、ちょっと悲しい気持ちにもなります。

今回、壁を3面使って、植物と鳥を描いています。鳥というのは、どこかに飛んで行っても、やすらげる場所に戻って来て、また新しいところに飛んで行ったりと、そういう感じが出せているといいなと思っています。イムズ、アルティアムさんで展示をした我々作家もご来場いただいたお客さんも何かしら、ここでの思い出を覚えていられたらいいなと思いました。この鳥たちのように、集まったり、あるいはどこかに一緒に飛んでいき、それぞれが活動していく。そうして、それぞれの考えと価値観を広めていくようなことができたらいいなと思いを込めて作っています。ゆっくりご覧いただけたらと思います。

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かわいくて、あたたかなタッチで描かれた鳥たち。壁には、他にも生き物たちが生き生きと描かれているのでお見逃しなく!

 

イベントDATA

それぞれの作家さんの言葉に、胸が熱くなりました。鹿児島さんの『アルティアム』はみんなの集い、旅立ってもまた戻って来たくなる場所という言葉が深く心にしみ、カメラを構えながらこっそり涙ぐんでいたのは秘密です。作家さんと私たちを、アートというテーマで結びつけてくれる本当に大切な場所でした。いったん、「イムズ」での『アルティアム』は幕を下りますが、どこか別の場所で、別のカタチでまた、活動をしてくださることを願っています。それまで、作家さんも、お客さんも、それぞれ目指すところに向け飛び立ち、そして、また、それぞれがたくさんの思いを持って、『アルティアム』という木に集まる。そんなすてきな未来に、また出会えたらと思います。

会場には、塩田 千春さんのダイナミックなインスタレーション作品などが展開しています。また、淺井さんの作品は、『アルティアム』内だけでなく、「イムズ」館内2F下りエスカレーター、7F上りエスカレーター、館外北側・自転車置き場横電飾カバーの3箇所にも制作しています。(7Fエスカレーター作品は、8/12~15に制作予定)

私のように足繁く通っていたファンの方、はじめて知った方も、この機会を逃さずご来館ください。アートは、芸術であり、メッセージと生きるパワーを観覧の方にくれるはずです。

ちょっとさみしくて切ない、でもやっぱり、楽しくて元気になれる! 『三菱地所アルティアム』の最後の展覧会、『絶望を覆すことができない恋を正義とせよ、きみが、死んでも残る花。』にぜひ遊びに行ってください。

今までありがとう『イムズ』、『三菱地所アルティアム』、また会う日まで! 再出発をいつまでもいつまでも、心よりお待ちしています。

 

三菱地所アルティアム_きみが、死んでも残る花

本展ビジュアル

◆絶望を覆すことができない恋を正義とせよ、きみが、死んでも残る花。

[開催日時]
2021年7月14日(水)~8月31日(火) 10:00~20:00 ※最終日8月31日(火)は19:00まで
[出品作家]:
塩田 千春/淺井 裕介/潘 逸舟/津田 直/山内 光枝/鹿児島 睦/最果 タヒ
[休館日]会期中休館日なし
[料金]一般:400円  学生:300円
※再入場可
※高校生以下・障がい者等とその介護者 1名は無料
※アルティアムカード会員・三菱地所グループCARD(イムズカード)会員無料
※団体入場割引きはいたしません。会場内の混雑・密集を避けるため入場制限をおこなうことがございます。
※状況により、変更・中止する場合がございます。
[場所]福岡市中央区天神1-7-11 イムズ8F 三菱地所アルティアム
[主催]:三菱地所、三菱地所アルティアム、西日本新聞社
[協力]:ANOMALY、KENJI TAKI GALLERY、Reborn-Art Festival、suyama design、Taka Ishii Gallery Photography / Film
[後援]:福岡市、(公財)福岡市文化芸術振興財団

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