「君といつまでも〜Re:北九州の記憶〜」製作発表会見レポート

北九州エンタメ

「Re:北九州の記憶」について

私たちが記録として知っている「街の歴史」には当然のことですが、私たちの身の回りの、ごくごく個人的なことについては記されていません。ですが、確かに当時を生きた人達はその場所に住んで、日々を暮らしていました。その時代に生きた家族のこと、仕事のこと、結婚のこと……様々なエピソードの「個人の歴史」が集まるとそれもひとつの「街の歴史」になるのではないでしょうか。

北九州の街で⻑年暮らしてきた高齢者の方々に地域の劇作家がインタビューを行い、その記憶の断片を ちりばめながら演劇的に脚色、戯曲に仕上げ舞台化する「Re:北九州の記憶」

 

北九州芸術劇場では、いつかは消え去ってしまう “個人の記憶”を後世へ継承していくことを目的に平成24 年に事業をスタート。10 年間で73 名の 方々からお話をうかがい、89 の作品が生まれました。

 

節目を迎えた今回は、これまで若手劇作家たちが執筆し蓄積してきた物語をモチーフに、現代を俯瞰した作品に定評のある南河内万歳一座・内藤裕敬が新作を執筆。出演には地元北九州で活躍する演劇人、そして南河内万歳一座から荒谷清水を迎え、北九州芸術劇場小劇場と東京芸術劇場シアターイーストで上 演します。

10年間の集大成となる記憶の物語をどうぞお楽しみください。

脚本・構成・演出/内藤裕敬(南河内万歳一座)コメント

―「Re:北九州の記憶」という企画の印象について

公共ホールが行う自主事業としてとても地元に密着した企画であるし、なおかつ地元の幅のある世代の交流を生む企画。作品として舞台で上演されることによって、普段は劇場に足を運ばない方々にもお友達 と一緒に来てもらったりして、年々観客層と人数が増えていく。公共事業としてとてもパーフェクトな企画だなと最初に感じました。ただ演劇なので、高齢者の方へお話を聞いて劇作家が自分のフィルターを通してオリジナルのアレンジを加えて作品に仕上げる、つまり過去と現在が融合して今この現在に通用する、 現在だからこそ輝くようなストーリーになっていくことがとても大事だなと思いまして。そこまでのレベ ルで完成させることができるかどうかは全く未知数だったので、「これはやってみなきゃわからないができたら凄いな」と思ったのが最初です。

 

 

―新作の構想について

過去の戯曲の中から一本の作品に仕上げられそうな要素をピックアップして、それを7 作品くらいに絞ったものをうまく構成しながら、僕の新しく書く部分で一本にまとめていこうというのが今回の作業。とてもグッとくる作品だけど特色がありすぎてうまく繋げられないものもあるので、エピソードのエッセンスを頂いて新しい部分を書き加えることで全体をまとめ、なおかつ新しく面白く、そして「昔はよかった」 とノスタルジーに偏って終わりではなく、現代性がちゃんと担保できるような作品にしたいと思っていま す。お話は時系列で並んでいて、戦後まもなくから徐々に現代へ向かってくるのですが、今のところ若⼾大橋ができる1960 年頃までの話を並べています。5 つほどのエピソードはもう稽古に入っていて、どう現代の視点を持たせて一本にまとめあげるかというのは稽古を見ながらやろうと思ってます。

 

タイトル「君といつまでも」について

人の個人史はその方が亡くなれば消えてしまうけど、その人の子どもや孫でなければ聞けない話がいっぱいある。この街の色々なものに触れていく生活の中で、おびただしい数の記憶が取り返しのつかないものになっている。しかしそういうもののひとつひとつが街の中で生きている。昔と縁を切った現代というのはありえない。消えてなくなってしまっているけれど、未だにそこかしこに残っているものに囲まれていつまでも生きている感じがして。 “君”という代名詞に何を入れるかは人それぞれですが、「君といつまでも」という気がしてるんです。作品をご覧になって、“君”とはどの“君”かはお客さんが自由に楽しんでいただけたらいい。様々な“君”といつまでも暮らして現在がある、というような感覚です。

キャストコメント

「Re:北九州の記憶」が本当に大好きなので、今回東京へもっていくということで、東京にいる地元が北九州の人や、全然別の地域の人も、なにか実家に帰るみたいな気持ちで劇場に来てくれたら嬉しいなと思っています。/高野由紀子(演劇関係いすと校舎、KAKUTA)


私は個人的には、「Re:北九州の記憶」はご家族で見てほしいと思っています。私も出演した際に⺟と祖⺟を呼んで観てもらったのですが、その時に初めて⺟からおばあちゃんの知らないお話を聞きました。そういった、観劇の後にも色々なことが続いていくような作品じゃないかなと思っています。私も北九州生まれ・北九州育ちの俳優として一生懸命頑張りたいと思います。/平嶋恵璃香(ブルーエゴナク)

 

公演情報

[日程]

2 月23 日(木祝)14:00
2 月24 日(金)14:30◎
2 月25 日(土)14:00/18:00★
2 月26 日(日)14:00
※東京公演 3 月3 日(金)〜5 日(日)
◎学校鑑賞あり ★アフタートークあり

[会場]

北九州芸術劇場 小劇場

[脚本・構成・演出]

内藤裕敬(南河内万歳一座)

[作]

穴迫信一(ブルーエゴナク)、鵜飼秋子(さかな公団)、大迫旭洋(不思議少年)、坂井彩(じあまり。)、塩津順子、 寺田剛史(block)、藤本瑞樹(二番目の庭)、守田慎之介(演劇関係いすと校舎)、山口大器(劇団言魂)、 脇内圭介(飛ぶ劇場)、渡辺明男(バカボンド座)

[出演]

⻘野大輔(非・売れ線系ビーナス、⾳漏れとチラリズム)、有門正太郎(有門正太郎プレゼンツ)、 内山ナオミ(飛ぶ劇場)、高野由紀子(演劇関係いすと校舎、KAKUTA)、 高山実花、寺田剛史(飛ぶ劇場)、平嶋恵璃香(ブルーエゴナク)、宮村耳々、山口大器(劇団言魂) /荒谷清水(南河内万歳一座)

 

【お問い合わせ】
北九州芸術劇場
TEL093-562-2655(10:00〜18:00)

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