『PAPER:かみと現代美術』熊本市現代美術館 10月1日(土)〜 12月18日(日)
私たちにとって欠かすことができない「紙」をテーマにした展示が2022年10月1日(土)〜12月18日(日)の期間、熊本市現代美術館で開催されます。タイトルは「PAPER:かみと現代美術」。紙の歴史は長く今から2000年以上前に発明され、人とのかかわりなしには存在しません。
こんにちは。おもちです。
雑誌を作ってきた情報誌にとって「紙」は情報記録・伝達手段としてあまりにも身近で、だからこそ「紙」と「インターネット」という対立だけではない違った視点で紙というものを見てみたいと思っていました。今回の展示とても楽しみにしています。
- 1 出品作家9名の紹介
- 1.1 半谷学 HANAGAI Manabu | 1963年北海道生まれ 群馬県在住
- 1.2 半澤友美 HANZAWA Tomomi | 1988年栃木県生まれ 東京都在住
- 1.3 安部典子 AMBE Noriko | 1967年埼玉県生まれ 埼玉県在住
- 1.4 ウチダリナ UCHIDA Lina | 1990年東京都生まれ 東京都在住
- 1.5 播磨みどり HARIMA Midori | 1976年神奈川県生まれ 神奈川県在住
- 1.6 太田三郎 OTA Saburo | 1950年山形県生まれ 岡山県在住
- 1.7 小野田賢三 ONODA Kenzo | 1961年群馬県生まれ 群馬県在住
- 1.8 照屋勇賢 TERUYA Yuken | 1973年沖縄県生まれ ベルリン在住
- 1.9 渡辺英司 WATANABE Eiji | 1961年愛知県生まれ 愛知県在住
- 2 展示室内に紙の森が出現!新聞紙でできた「くしゃくしゃおばけ」
出品作家9名の紹介
半谷学 HANAGAI Manabu | 1963年北海道生まれ 群馬県在住
世の中の不要物、大量廃棄物などの「困りもの」にアプローチし、「紙にする」ことによってその作品は社会や環境について目を向けるきっかけを与え、柔軟な発想や新たな可能性も示唆する。本展では熊本県の特産品である畳の生産工程で生じる「い草」の端材から紙を作り、その「い草」の紙と忘れ物の傘による大規模なインスタレーションを発表する。
半谷学《さしがさばな》2000年
半澤友美 HANZAWA Tomomi | 1988年栃木県生まれ 東京都在住
溶かしたパルプをスポイトで吸い上げ、それを一滴ずつ垂らすことで平面もしくは立体作品を制作。紙の生成過程そのものが自身の表現行為と一致している点が極めてユニークだ。今回は叩いて作る「樹皮紙」にヒントを得た作品にも挑戦する。「紙になっていく」プロセスには「記憶」や「時間」、「痕跡」などのテーマが重ねられる。
半澤友美《The Histories of the Self》2019年 photo:Keizo Kioku
安部典子 AMBE Noriko | 1967年埼玉県生まれ 埼玉県在住
紙を「カットする」アーティスト、安部典子。木の年輪、地層、洞窟といったものを連想させる作品はフリーハンドによる線やかたちのカッティングを施し、何百枚と重ねることで作られている。「時間と自然と人間のシンクロニシティ」というテーマを具現化しようとする作品は、観る者のイマジネーションを様々に刺激する。
安部典子《地のかけら− A Piece of Flat Globe Vol.34》2013年 photo:Keizo Kioku
ウチダリナ UCHIDA Lina | 1990年東京都生まれ 東京都在住
型取りによる紙の立体物、熱を与える(=焦がす)ことで色の濃淡を生じさせた独自の「彩色」など、和紙に向き合う中で獲得した手法で作品を制作している。紙一枚が接している/引き受けている外と内の世界が、蛾の翅や人間の皮膚といったモチーフとリンクして境界のありようについて問いを投げかける。
ウチダリナ《Rebirth II》2018年 photo:comuramai
播磨みどり HARIMA Midori | 1976年神奈川県生まれ 神奈川県在住
コンセプチュアルに版画と向き合っているアーティスト。その性質や制作プロセス、社会的な機能や意味にフォーカスすることで版画や印刷物を多角的に考察した作品を手がけてきた。本展では版画にとって欠かせない素材である「紙」に光を当てることを試みる。紙を使うことの必然性や意味、紙そのものについての再考を促す。
播磨みどり《森を見て木を見ず》制作風景 2020年
太田三郎 OTA Saburo | 1950年山形県生まれ 岡山県在住
切手を使った作品で広く知られているアーティスト。切手以外にもハガキや新聞といった身近な紙製品、紙媒体にもユニークな視線を投じ、時事的なテーマを取り込みながら、現代社会の一端を示唆する優れた作品を発表してきた。本展では新型コロナウイルス感染症によって亡くなった人の数と同数の切手による作品などを紹介する。
《Bird Net − 世界はつながっている「献花」》2022年
小野田賢三 ONODA Kenzo | 1961年群馬県生まれ 群馬県在住
照屋勇賢 TERUYA Yuken | 1973年沖縄県生まれ ベルリン在住
本展では照屋が2011年3月12日の『上毛新聞』第一面に植物の芽を立ち上がらせた《Minding My Own Business》を小野田が持ち歩いて国内や欧州の人々とコミュニケーションを図り、官製ハガキを通して彼らそして照屋との応答を試みた「アクション」ともいうべき《Pilgrim》を紹介。新聞とハガキ、ふたつの紙媒体のアクションはこれからも続けられていく。
小野田賢三 ref. 照屋勇賢《Pilgrim》ベルリンにて 2011年
小野田賢三 ref. 照屋賢《Pilgrim》女川にて 2022年
渡辺英司 WATANABE Eiji | 1961年愛知県生まれ 愛知県在住
代表作《名称の庭》と《蝶瞰図》は、図鑑に印刷された植物や生物を切り抜いて「解放」させた作品。人間は自然を知るために「名前を与える」ことをしてきた。紙が記録や伝達といった役割を担ってきたことを鑑みれば、図鑑や百科事典は人間の欲望や行為を代表するものと言える。渡辺の作品は紙という器の中に見えてくる人間の姿を浮き彫りにする。
渡辺英司《名称の庭》箱根彫刻の森美術館インスタレーション 2014年
この9人のアーティストの紙へのアプローチや表現を見るだけでも、変幻自在の紙のあり方とどのような形にも変化させる人の創造力を感じることができそうです。
展示室内に紙の森が出現!新聞紙でできた「くしゃくしゃおばけ」
展示室内にはこんなスペースも出現します。「くしゃくしゃおばけ」とは新聞紙をくしゃくしゃにまとめてできた不思議な遊具。その素材は私たちに大変なじみ深い「熊本日日新聞」の古新聞なのです。読んだり、乗ったり、音を鳴らしたり、ふれあい方は無限大。素材としての新聞紙との出会いも楽しめそう。
余談ではありますが・・・
先日、学生時代に読んだ本を大人になって再び読む機会がありまして。最初に読んだときは本の重さや紙の質感を手のひらや指に感じながらページをめくるという行為も含めて本を読んでいたように思い出します。今回電子ブックで読み始めたのですがなんとなくしっくりこない。そして紙の本を買い直しました。これがなんなのか、私はこの展示を観たらわかるんじゃないかな、そんなことを期待しています。
「紙」を重要な素材として見出し、独自の表現を追求したアーティストたちの作品が並ぶ展覧会、ぜひ体感しに美術館へ足を運んでくださいませ。
会期:2022年10月1日(土)〜12月18日(日)
会場:熊本市現代美術館 ギャラリーⅠ・Ⅱ
開館時間:10:00〜20:00(展覧会入場は19:30まで)
休館日:火曜日
https://www.camk.jp