【福岡2021インタビュー produced by 福博ツナグ文藝社】第4回 テーマ「報道」

【福岡2021インタビュー produced by 福博ツナグ文藝社】第4回 テーマ「報道」

2021.9.21

ゲスト:宮岡朋治さん
(RKB毎日放送ラジオ局プロデューサー)

福岡市在住の “街と人をつなぐ” イベントコーディネーター・ライター 西山健太郎(非営利団体福博ツナグ文藝社 事務局長兼編集長)が、各界のスペシャリストをお招きして、現在の活動やこれからの展望についてお話を伺う【福岡2021インタビュー】。

第4回のテーマは「報道」。ゲストにRKB毎日放送ラジオ局プロデューサー、宮岡朋治さんをお迎えします。

放送局で働く人や役割について

――私たちにとって、テレビやラジオはとても親しみのあるものですが、その作り手については知らないことも多いです。まずは、放送局でどういった人が働いているのか、どういった役割の人がいらっしゃるのか、お教えいただけますか?

大学のメディア論やマスコミ論の講義に呼ばれて、学生に向けてお話しする機会がたびたびあるのですが、そうした場でもよく尋ねられるのが、「プロデューサー」と「ディレクター」の違いについてです。
番組制作を家づくりに例えると、プロデューサーは設計士で、ディレクターは現場監督。すなわち、お金をいくらかけて、どういった建材で、どういったデザインの家を建てるのか、施主にあたるクライアント(スポンサー)のコンセプトに沿ったグランドデザインを描くのがプロデューサーの役割です。
一方、ディレクターは、プロデューサーが描いた設計図に沿って具体的に動いていきます。すなわち、取材や収録を行い、それを編集して番組に仕上げていくのです。そういった作業をカメラマン・音声・美術・テロップといった専門技術を有する人たちとチームを組んで行っていきます。
そうした「制作部門」については、自局のスタッフだけで行う場合のほか、その全体を「制作会社」に外注する場合や、部分的にフリーランスのプロに委託する場合もあります。そのような作り手側の役割分担や出演者のキャスティングなども、プロデューサーの仕事です。
「制作部門」のほか、キー局(RKBの場合はTBS)や系列局が制作した番組を流したり、キー局のニュース枠に地元の事件・事故の情報を提供したり、あるいは1日単位から月単位の放送プログラムを立てたりする「編成部門」や、広告収入を確保するためにコマーシャル枠を売る「営業部門」などによって、放送局は成り立っています。

宮岡さんのお仕事や経験について

――まさに、局全体のチームワークによってテレビやラジオの番組ができ上がっているのですね。宮岡さんはこれまでにどのような、仕事を経験してこられたのですか?

私は、1997年4月にRKB毎日放送に入社しました。最初に配属されたのは報道部で、警察・司法担当の記者としてキャリアをスタートしました。2001年9月11日にアメリカの同時多発テロが起こった際は、ワールドトレードセンター内に支店があった福岡の地銀の本社に、他社の記者とともに泊まり込んで取材を行いました。事件・事故・災害の現場から状況を伝える、いわゆる「顔出し」もたくさん経験しました。
2002年に7月にラジオ制作部に異動し、午後の生ワイド情報番組や深夜の若者向け番組のディレクターなどを担当します。そして、2010年2月に社会情報部に異動し「今日感テレビ」「豆ごはん。」といった番組のディレクターを担当。2013年4月には、最初の所属である報道部に異動し、県政・経済担当記者、選挙担当・災害担当デスクを経験しました。そして2017年4月、再びラジオ制作部に異動し、プロデューサーとして朝の生ワイド情報番組などを担当し、現在に至ります。いまは現場に出ることも少なくなり、内勤が多いですね。

報道に携わるなかで大事にしていること、心がけていることはありますか?

新人時代にお会いしたMBS毎日放送の記者・榛葉健(しば たけし)さんの「報道は、常に弱者に寄り添わないといけない」という言葉がとても強く印象に残っています。
100%公正中立な報道というのはあり得ませんが、報道で救われる人がいる、というのは明確な事実です。報道に携わる者としてそうした視点に立った取材・制作を行うべきだという考えは、今現在の私にとって、揺るぎない指針となっています。
榛葉さんはその後も、数々のドキュメンタリー番組を手がけられ、東日本大震災の被災地・宮城県南三陸町を舞台に、女子高生たちのひたむきに生きる姿や、心の奥にある純粋さを描いた映画「うたごころ」を自主制作されるなど、まさに有言実行を続けていらっしゃいます。
また、私自身、報道に携わる者の一人として、社会の動きをいち早く感じ取り、放送を通して広く視聴者に伝える使命があると考えています。
いまから15年ほど前、知人を通じてセクシャルマイノリティという概念や存在を知ります。取材を重ねる中で、婚姻届が提出できなかったり、手術に立ち会えなかったり、身内や知人からの偏見に苛まれたり、といった、パートナーが同性であるときに生じる不都合が数多く存在していることが分かってきました。
そうしたセクシャルマイノリティに関する報道については、実際のところ、社内でも慎重論や懐疑的な意見もありました。とはいえ私には強い思いがありましたので、社内の制作現場だけでなく、仕事のあと酒を酌み交わしながら、上司や同僚に現状を説明し、報道の必要性を訴えたこともありました。

今振り返ってみて、つらかった思い出や苦い思い出として記憶に残っている出来事はありますか?

2000年5月、当時17歳の少年が包丁を持って佐賀発福岡行きの西鉄高速バスを乗っ取り、車内に立てこもるというバスジャック事件が起こりました。
当時私は、警察担当の報道記者をしており、西鉄の本社に泊まり込んで、取材を行いました。
発生から約15時間後、東広島市のサービスエリアで特殊部隊(SAT)がバスに突入して犯人は取り押さえられたのですが、5名の死傷者が出たセンセーショナルな事件でした。
お亡くなりになった68歳の女性の葬儀の取材にあたったのも私でした。遺族の方を報道各社の記者が囲むのですが、誰もマイクを向けられない状況でした。そこで私が意を決して、第一声を発しました。すると他社のマイクが次々と差し出され、私の手の中へ。両手でたくさんのマイクを抱えながら、遺族の方のお話を伺ったのを思い出します。
他社との特ダネ競争、選挙報道で当確を打つタイミングの難しさ、人の生き死にがかかった裁判の傍聴・取材の緊張感など、この職場ならではの厳しい局面に直面してきた経験は枚挙にいとまがありません。

そうした一方で、嬉しかった思い出や印象に残っている思い出についても教えていただけますか?

2015年に、福岡で暮らすスリランカ人青年、スジーワ・ウィジャヤナーヤカさんと出会いました。
彼は、「国や言葉は関係ない。野球の心で世界を平和にしたい」という大きな夢を抱き、アマチュア野球の審判員として活躍しながら、母国スリランカで審判講習会を開催したり日本で集めた野球道具を届けたりして、野球の普及活動を行っていました。2012年には南アジア初となる野球場がスリランカに完成。スリランカのスポーツ大臣やJICA所長、在スリランカ日本大使らとともに尽力したスジーワさんは、オープニング試合で球審を務められたそうです。
そうした彼の活動を広く紹介したいと、スリランカでの現地取材も行い、2016年5月にドキュメンタリー番組『新 窓をあけて九州』で「母国に届け!野球の心」というタイトルで放送しました。
その取材・制作を通して、スリランカで出会った子どもたちの、心の底から野球を楽しんでいる姿を目の当たりにして、スジーワさんの熱意と偉業にあらためて感銘を受けました。さらには、視聴者の方々から「スリランカに贈ってほしい」とたくさんの野球道具が届き、放送に対する反響の大きさを実感しました。

音声メディアのニーズについて

――テレビやネットなどを通して目から入る情報がオーバーフローしているような状況の中で、ラジオをはじめとする音声メディアのニーズが高まりを見せています。

耳から情報を得るラジオというメディアが注目されていることは、とても嬉しく、有難いことだと思っています。
私自身、子どもの頃からラジオが大好きで、放送局に入社した一番大きな理由は、ラジオ番組の制作に携わりたいという思いでした。
特に印象に残っている番組が、私が中学生のときに出会った番組「小泉今日子のオールナイトニッポン」です。テレビでは、押しも押されもせぬアイドルだった小泉今日子さんが、ラジオでは飾り気のない姉御肌の本音トークを展開。衝撃とともに、言葉では表しがたい好感を受けました。
ラジオの良さは「人の息づかい」が感じられるところです。そうした、「寄り添うメディア」としての価値がこれからいっそう高まっていくと期待しています。

最後に、宮岡さんの今後の抱負や夢について教えていただけますか?

もっとラジオファンを増やしたい、という思いは強いですね。たくさんの人に聴いてもらうことよりも、その情報を必要としている人に的確に届ける、ということを主眼に置いて、番組作りに関わっていきたいと思っています。
私が制作に携わり、昨年5月に放送した「RKB報道スペシャル “魔法の素材” が舞う~プラスチック大気汚染~」が、同年の日本民間放送連盟賞ラジオ報道番組部門で優秀賞を受賞しました。安価で用途にあわせて容易に加工可能なプラスチックの負の側面に着目し、海洋汚染とともに大気中を漂う「マイクロプラスチック」による大気汚染について取り上げた番組です。
災害や事件、事故に関する報道に加えて、こうした、まだ誰も気づいていない、誰も取り上げていない、だけれども私たち自身や次の世代にとってとても重要な情報にいち早く着目して、より分かりやすい形で報道していく。そうしたスタンスをこれからも取り続けていけたらと思っています。

――本日は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。宮岡さんの今後ますますのご活躍を期待しています。

【関連リンク】

RKB毎日放送 公式HP https://rkb.jp/

※本稿は、毎週月曜夜9時にClubhouseにて配信中の『月9福岡応接間 produced by 福博ツナグ文藝社』を編集・再構成したものです。

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