Vol.8 「笑い」は人類を救うのだ
笑うことが好きだ。
怒ったり悲しんだりするよりも笑って過ごしたいし、大抵のことは笑ってすませるような人物になりたい。なんなら死ぬ時だって笑っていたいと思っている。
ただ、悲しいかな小市民たる自分の器の小ささでは、なかなか叶えられれないことも事実。
だからこそ「笑わせて」くれるものが大好きなのである。
そんな「笑い」好きがちょっと心がささくれている時でも読んだら思わず笑ってしまう本を集めてみました。
「君の前で息を止めると呼吸ができなくなってしまうよ」当たり前ポエム
タイトルですでに笑えるこの1冊。
読んでいる間中、口をついて出るのは「でしょうね」「そりゃそうだよ」「当たり前です」というツッコミの嵐。
だから「当たり前ポエム」。
とても綺麗な写真とともに、美しく切ない風なのに読んでみたら「当たり前」のことをリリカルに、ポエジックに歌い上げてみせる。知能と時間をこういうことにつぎ込む行為がとても好きだ。筆者は天才だと思う。
『目隠しをすると 何故だろう 何も見えなくなるんだ』
『君といると、一日前のことを 昨日のことのように思い出してしまう』
『一人より二人のほうが 人数が多いね』
『笑ってごらん きっと笑顔になるから』
…などなど。すでにこの段階でツッコみたい気分になりませんか?
書店でタイトル見てそのまま半笑いでレジに持っていったこの本には、「心が震えそうで震えない」という帯がかかっておりました。だめじゃん。
「挫折を経て猫は丸くなった」書き出し小説
小説の「書き出し」だけで成立するという斬新な小説スタイルの「書き出し小説」。
様々な人が投稿した「書き出し小説」を集めた、2冊めがこの本。ジャケットに気を取られ、2~3ページめくってレジへ直行。
自由部門と規定部門があって、それぞれに秀逸な作品が集められている。
正直続きが気になって仕方ないものもあり。誰か書いてくれないだろうか。
個人的に一番笑ったのはこれ↓
『「これの色違いありますか?」八百屋に妙な客が来た。』
…何の色違いだ。かろうじて成立するならパプリカか?
他にも
『ミステリーツアーはガイドの失踪で幕を開けた。』
『ガンジーが生涯でただ一人、殴った男の話をしよう。』
など、この先どうするんだといったものや純粋に気になるものが揃っている。
お題によってはホラーだったり、純文っぽかったり、意外な深みを感じさせるものも山ほどある。
これが一般人の投稿だというのだから、世界は才能で溢れている。
2作目ということは1作目があるということで…、もちろん後日買いました。
こちらも大変面白かった。
編者の天久氏の解説(ツッコミ)がまた面白さを加速させているので、ぜひ読んでみてほしい。
こういう本に共通するのが誰かに読み聞かせをしたくなることなのだが、聞かされる方は迷惑だろうか。
「明日切腹させれられないための戦国武将のビジネスマナー入門」
ビジネスマナーの本でもなければ、歴史本でもありません。
純粋に笑うためにビジネスマナーと歴史の知識を組み合わせて作り込んだネタ本。
なんでかこの本が本屋でビジネス本のコーナーに並んでるの見たけど。
『謀反の場面で使う敬語』
『主君に背いた際の始末書の書き方』
『刀狩の企画書の書き方』
『ブラック大名を見分ける』
『出世する武将の必須アイテム』
『上洛を勧誘する電話への対応』
など、明日の仕事にはまったく使えませんが、ひととき笑って楽しい気分になるには最適な一冊。
作り込み具合が本気を感じさせる。
『武将が読むべき一冊 「謀反力」明智光秀・著』
に添えられた表紙の画像なんて、完全に岩○新書。帯まで再現されてて素晴らしい。
ガチの歴史ファンにはおすすめしませんが、学校で日本史習ったな~くらいの知識があれば十分楽しめます。
ビジネスマナーの本も読んだことがあれば、なお笑える。
「われ笑う、ゆえにわれあり」
「笑う哲学者」土屋教授のユーモアエッセイ。
お茶の水女子大学の名誉教授という肩書がありながら、まったくそんなことを感じさせない(褒め言葉)爆笑エッセイ。
妻に軽んじられ、学生に侮られ、編集者にあしらわれる土屋教授は、見事な屁理屈をこね回し、強きにおもねり自分より弱いものはほぼいないという、本当に素晴らしい人物なのだ(褒めています)。
多くの著作の中からどれを選ぶか考えたものの、とりあえず最初の一冊をチョイス。
「以前から書きとめていたものがかなりの量になり、出版をしきりに勧めてくれる人がまわりにいなかったので、自分から出版を交渉した結果がこの本である」(はじめに)より。
この段階ですでに買う価値があると思った。
「愛ってなんぼのものか」
「わたしはこうして健康に打ち勝った」
「今日からタバコをやめられる―でなくても禁煙をやめられる」
など、目次を読むだけでもう笑える。
ダメな部分って誰にでもある。そのダメさを「いいもの」であるかのようにすり替えて、土屋教授の独自の論理展開は続く。
この愉快な論理に自分のダメな部分を重ねて読むのも励まされていい。
大抵のことは、笑いですませることができそうな気がする。真似したら絶対ダメなんだろうけど。
…ネズミ男になれたら、案外気楽に生きられそうって思ったことありません?
終わりに
人類を救うのは「愛」かもしれないし「食料」かもしれないし「お金」ということもあるだろう。
数ある選択肢のなかで、何が正解かはわからない。
だが「笑い」というものも確実に人類を救うのではないだろうか。
笑えば人は心が軽くなる。よく知らないが免疫力が上がったりもするらしい。
大切な人には笑っていてほしいと思うし、自分もできるだけ笑っていたい。
読んで、笑って、「あー、楽しかった」。それだけで、世界は少し自分に優しくなると思う。
注意:今回紹介した本は公の場で読むことはおすすめしません。突然吹き出す不審人物になる危険性が高いです。(※バスや電車の中などは特に危険)